2012/07/24 【解説】サービス付き高齢者向け住宅の前払い金初期償却について

先日、日本弁護士連合会から「有料老人ホーム及びサービス付き高齢者向け住宅における入居一時金の想定居住期間内の初期償却に関する意見書」厚生労働省、国土交通省宛に提出されました。この入居一時金の初期償却の問題は、以前から消費者関係省庁において指摘されていたところです。

初期償却とは、前払い金・入居時に支払う金額のうちで返還されないものをさします。前払い金については、高齢者の居住安定確保に関する法律では、家賃等の前払い金を受領する場合にあっては、当該家賃等の前払い金の算定の基礎及び当該家賃等の前払金についてサービス付き高齢者向け住宅事業を行うものが返還債務を負うこととなる場合における当該変換債務の金額の算定方法が明示された契約であり、前払い金は、保全措置を講ずることが義務付けられています。

今回の意見書では、「前払い金」は、「預かり金」であるという性格が明らかになったため、消費者がサービスを受けた対価以外は、返還すべきものであり、従っていわゆる「長生きリスク」に相当する、初期償却は、不適当であるとしています。今後、この問題に対しての、訴訟が起こることも予想され、事業者としては、あらかじめ、これらの問題に対して、適切に対処しておく必要があります。ちなみに、現状でのサービス付き高齢者向け住宅の登録をみると、前払い金をとっている登録は1873件のうち52件(7/24時点)ありました。うち前払い金の初期償却があるのは、1件だけでした。

初期償却の算定方法は、事務連絡により昨年の11月に国土交通省、厚生労働省より家賃等の前払い金の算定の基礎及び返還債務の金額の算定方法に関する例が各都道府県に示されています。しかし、今後、サービス付き高齢者向け住宅を運営される事業者は、前払い金の初期償却については、訴訟を受ける危険が生じる為に、十分に注意して実行されるようお勧めいたします。

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※参考@ 有料老人ホーム及びサービス付き高齢者向け住宅における入居一時金の想定居住期間内の初期償却に関する意見書(日弁連)

※参考A 2011/11/25【お知らせ】家賃等の前払い金の算定の基礎及び返還債務の金額の算定方法について